インボイス制度の開始にあわせて課税事業者(インボイス発行事業者)になったものの、消費税の負担が重い、事務作業が増えたと感じている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、免税事業者に戻るための手続き、メリット・デメリット、そして判断のポイントを解説します。
免税事業者に戻る条件
免税事業者に戻るには、以下の条件を満たす必要があります。
- 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること
- 適格請求書発行事業者の登録取消届出書を提出すること
- 課税事業者選択届出書を提出していた場合は、課税事業者選択不適用届出書も提出すること
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、登録を取り消しても課税事業者のままとなります(売上が1,000万円以下になるまで免税にはなりません)。
登録取消届出書の提出方法と期限
提出期限
登録の取消しを受けたい翌課税期間の初日から起算して15日前の日までに提出する必要があります。
個人事業主の場合、課税期間は1月1日〜12月31日です。例えば、2027年1月1日から免税事業者に戻りたい場合は、2026年12月17日までに届出書を提出します。
提出方法
- e-Taxで提出:国税電子申告・納税システムから電子で提出可能
- 税務署に持参:所轄税務署の窓口に直接提出
- 郵送:所轄税務署宛に郵送(消印日が提出日となります)
免税事業者に戻るメリット
1. 消費税の納税がなくなる
最大のメリットは、消費税を納める必要がなくなることです。例えば年間売上550万円(税込)の場合、2割特例でも約10万円、3割特例なら約15万円の消費税がかかりますが、免税事業者ならゼロです。
2. 事務負担の軽減
消費税の確定申告が不要になり、インボイスの発行・保存の義務もなくなるため、経理作業が大幅に軽減されます。
3. 資金繰りの改善
消費税の納付がなくなることで、手元に残る資金が増え、事業の資金繰りが改善します。
免税事業者に戻るデメリット
1. インボイスを発行できなくなる
免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できません。取引先が課税事業者の場合、あなたへの支払いについて仕入税額控除ができなくなります。
2. 取引先への影響
仕入税額控除ができなくなった取引先は、その分のコスト負担が増えます。結果として以下のリスクがあります。
- 取引の縮小や打ち切り
- 消費税分の値引き要請
- 新規取引の獲得が難しくなる
なお、2026年9月30日までは経過措置として、免税事業者からの仕入でも80%の控除が認められていますが、2026年10月以降は50%に、2029年10月以降は控除がゼロになります。
3. 再登録に時間がかかる
一度登録を取り消した後に再びインボイス発行事業者として登録するには、再度登録申請が必要です。
BtoCビジネスなら影響が小さいケース
免税事業者に戻る影響は、ビジネスモデルによって大きく異なります。
BtoCビジネス(一般消費者向け)の場合、取引先は仕入税額控除を行わないため、インボイスの有無は取引に影響しません。
以下のような業種はBtoCが中心のため、影響が比較的小さいと言えます。
- 美容室・理容室
- 個人向けの習い事・教室
- BtoCのネットショップ
- 個人向けのカウンセリング・コーチング
- 一般消費者向けの飲食店
一方、BtoBビジネス(企業・事業者向け)が中心の場合は、取引先への影響が大きいため、慎重に判断する必要があります。
判断のポイント
免税事業者に戻るかどうかは、以下のポイントで総合的に判断しましょう。
- 取引先は誰か?BtoC中心なら影響は小さく、BtoB中心なら影響は大きい
- 消費税の負担額はいくらか?シミュレーションで各制度の納税額を比較
- 取引先の反応は?事前に取引先に相談し、影響を確認
- 今後の事業計画は?売上が1,000万円を超える見込みがあれば、どのみち課税事業者になる
- 事務負担はどの程度か?会計ソフトやサポート体制の有無も考慮
一人で判断が難しい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
※本記事は2026年2月時点の情報に基づいています。制度の詳細は国税庁のウェブサイトでご確認ください。